秘密のI love you

答えはいつだってステージにある

死ぬも生きるも

おれには生涯、てめぇという
つえぇ味方があったのだ

有頂天一座ではこの台詞が3回出てくる。それぞれに意味合いが全然違う。大好きな台詞はたくさんあるけれど、この言葉には敵わないなと思う。





1回目は冒頭の劇中劇、国定忠治で二代目恵美子が演じる忠治が愛刀に向かっていう。今夜を最後に赤城山を離れなければいけない。可愛い子分たちとも離れる。果てしのない旅に出る。それでも、てめぇという強い味方があってここまできた。きっとこれからも一緒だ。この恵美子がめちゃくちゃかっこよくて、座長であり看板女優であり、みんなに愛される人だった。
渡辺えりさん、最初から最後まで安定感があって、何があっても受けとめる二代目そのものでした。温かい空気を作っていたのはほんとにえりさんの人柄だなと思っていました。千穐楽のカーテンコール、スタッフさんが袖でだめだめって手を振ってたのに御構いなしで、全員喋って!ってマイクを回してくださって、舞台全体をいつも見ている方だなぁと。




2回目は二幕終盤、三代目恵美子を襲名する小夜子が、襲名披露公演で演じる忠治。きっと二代目からすればまだまだ未熟で足りないことだらけでも、観客は大歓声で迎える新しいヒロイン。可能性の塊みたいな小夜子が堂々と演じる忠治もかっこいい。
お姉さんの復讐という目的があって一座にやってきた小夜子だけど、お芝居がすきだという気持ちは本当だったんですよね。きっと、舞台に立つとその役が乗り移ったような芝居ができる、華のあるひとなんだと思う。芝居をしているときは、目的のことも忘れてただその役でいられたんじゃないだろうか。二代目のことだって、恨んでいながらも本当に師として慕う気持ちもちゃんとあったのだと思う。




どっちの忠治もめちゃくちゃかっこいいけど、そのどちらよりも本編最後、ぼろぼろになっていろんなものを失ったはずの2人が言う台詞がいちばんすきでした。いろいろあって、まぁ全部茶番だといえばそんな気もするけど結構大変な目にあって、でもお互いがいたからやってこれたんだ、その気持ちは嘘じゃなかったじゃないかって。死ぬも生きるも、あんたがいればこそなんだって。全部失くしたってあんたがいるならやっていけるよ。そんな想いが見えるようなこの言葉を聞くと、この世界が愛しくて仕方がなくて泣けてしまう。ここで幕は降りるけれど、その後の世界で2人が、いやみんなが幸せになっていたらいいなぁと思う。



はやしくんが出ているから、だけではなくて本当にこの舞台がすきで、この世界のひとたちがすきで、何回見ても楽しい楽しい舞台でした。見るたびに熱量が高まってお芝居が変化していくのが面白くて、終わりが来なければいいのにと思う程でした。
実際に心の底から有頂天になってるひとは実は全然いなくて、みんな誰かを羨ましがっている。羨ましいという感情は少し恋に似てる気がしました。あの人のようになりたい、憧れる、でもなれない、ならば少しでも近づきたい、近づけない、せめてあの人の幸せを願う。あの人がいさえすれば、幸せに生きていれば。そんな気持ちを恋と呼んでも良いと思う。だからこれは「チャンバラと恋の物語」なんだなぁと。
素敵な舞台に出会えたこと、有頂天な日々を過ごせたこと、本当に幸せな2月でした。